top of page

【2026年版】原状回復とは?テナント退去時の基本ルールを完全解説

  • shuheikakita9
  • 1月15日
  • 読了時間: 14分

更新日:1月16日

テナント退去時の「原状回復」について、「想定以上に高額な費用を請求された」「どこまで直さなければならないのか分からない」といったお悩みはありませんか?


原状回復は法的な義務でありながら、その範囲や費用負担について正確に理解している事業者は決して多くありません。適切な知識があれば、不当な費用負担を避け、大幅なコスト削減が可能です。


この記事では、原状回復コンサルティング実績が多数の建設コンサルタントフォレル合同会社が、原状回復の基本ルールから実践的な対策まで、テナント入居者が知っておくべき重要ポイントを分かりやすく解説します。




1. 原状回復とは?定義と法的根拠


1-1. 原状回復の基本定義

原状回復とは、賃借人が賃貸借契約終了時に、借りた物件を契約開始時の状態に戻すことです。

ただし、これは「新築時の状態に戻す」という意味ではありません。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、以下のように定義されています。

「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」ただし、居住用物件と異なり、事業用賃借では契約書の「原状回復要項」が適用されるかどうかが重要になることが多いことに注意する必要があります。




1-2. 法的根拠となる条文

原状回復義務の法的根拠は、民法第621条(賃借物の返還)に定められています。


民法第621条

賃借人は、賃貸借が終了したときは、賃借物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる。

 

また、商業テナントにおいては、借地借家法第38条(定期建物賃貸借)の規定も重要となります。

 

1-3. 国土交通省ガイドラインの位置づけ

2025年現在、原状回復に関する最も重要な指針は、国土交通省が策定した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(改訂版)」です。


このガイドラインは法律ではありませんが、裁判所の判断基準として広く採用されており、実質的に業界標準となっています。こちらは民間賃貸住宅を想定して作られたものであるため、オフィスや店舗などの原状回復にそのまま適用されるものではありませんが、原状回復義務がどのように科せられるかという点では共通の考えとなる部分があります。




2. 事業用賃貸における一般的な借主負担と貸主負担の境界線


2-1. 借主(テナント)が負担すべきもの

以下のような損耗・毀損は、一般的に借主が原状回復費用を負担する必要があります。


故意・過失による損傷

  • 壁に空けた釘穴(画鋲程度を除く)

  • 設備の故意による破損

  • 清掃不良による著しい汚損


善管注意義務違反

  • 結露を放置したことによるカビ・腐食

  • 通常の清掃を怠ったことによる汚損

  • 設備の適切なメンテナンス不履行


通常使用を超える使用

  • タバコのヤニ・臭いによる損傷

  • 事業用途以外での使用による損傷

 



2-2. 貸主(大家)が負担すべきもの

一方、以下は「通常損耗」として貸主負担となることが多い項目です。借り手が追加で費用を負担するものではありません。※契約条件による

 

経年劣化

  • 日照による壁紙、木枠などの変色

  • 設備の通常使用による磨耗

  • 構造部分の経年劣化


通常使用による損耗

  • 通常使用の範囲内での汚損

  • スイッチ、コンセント周りの黒ずみ

  • ブラインド・カーテンレールの摩耗


ブラインド故障の事例

事務所テナントとして入居していたA社のケースでは退去時にブラインドの故障等により全数交換と示されておりました。


詳細を調査すると、そもそもの製品不具合による故障や日照による日焼けなどが交換対象となっていたこと、また健全に稼働するブラインドに関しても、不具合があって交換するブラインド横並びになると仕様が合わないということで交換対象となっていたことが判明しました。


入居者に負担義務がある交換対象と、貸主に負担義務がある通常損耗や仕様変更などの項目を明確化することで入居者の負担を半分以下に抑えた事例もあります。




3. 住宅と商業(事業用)テナントで適用される法律の違い

3-1. 住宅用賃貸

住宅物件の原状回復では、借地借家法および国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が広く参照されます。 これらは、個人の居住を目的とした賃貸契約における消費者保護の観点を重視したルールです。


主な特徴は以下の通りです。


  • 借地借家法による保護規定が適用 → 貸主(オーナー)よりも借主(入居者)の立場が守られる構造。 → 契約更新拒絶や立退き、修繕負担などについて厳格な制限が設けられています。

  • 国土交通省ガイドラインが事実上の基準 → 「通常損耗(経年劣化)」は貸主負担、「故意・過失による損耗」は借主負担という原則。 → クロスの日焼け・床の摩耗・家具跡などは原則として借主の負担にならないとされています。

  • 消費者保護の観点が強い → 借主が個人であることを前提に、「説明責任」「情報の非対称性」への配慮がなされています。 → 契約書に不利な条項があっても、実態にそぐわない場合は無効と判断されることもあります。


つまり、住宅賃貸では「借主保護」を前提とした法的枠組みの中で、トラブル防止のためのガイドラインが機能しています。




3-2.商業テナント

一方で、オフィス・店舗などの商業テナントは、住宅と異なり「事業者間取引」として扱われます。 そのため、法的には契約自由の原則がより強く適用され、借主保護のルールは限定的です。


主な特徴は以下の通りです。


  • 事業者間の契約として扱われる → 借主が法人または事業主であるため、対等な交渉力を前提にしています。 → 借地借家法は一部適用されるものの、住宅に比べて制限は緩やかです。

  • 契約自由の原則がより強く適用 → 原状回復の範囲や負担区分は、契約書で明記された内容が最優先されます。 → 「入居時の状態に戻す」範囲を超えて、スケルトン返しを求める契約も存在します。

  • 国土交通省ガイドラインの適用は限定的 → ガイドラインは「居住用」を前提としているため、事業用物件には直接の拘束力がありません。 → ただし、判断の参考資料として引用されることはあります。

  • トラブル時は契約内容が基準の原則となる → 「賃貸借契約書」、「貸方基準」、「設計図」「引渡し時の状態記録」などが、原状回復範囲を判断する有力な根拠となります。



■ まとめ

区分

住宅用賃貸

商業テナント

契約の性質

個人消費者向け

事業者間取引

主な適用法令

借地借家法(強い保護)

借地借家法(限定的)+契約自由の原則

ガイドライン

国交省ガイドラインが標準

参考程度、拘束力なし

原状回復の考え方

通常損耗は貸主負担

契約書の定めが優先

トラブル時の判断基準

ガイドライン・裁判例

契約書・証拠資料

商業テナントの原状回復では、「ガイドライン」よりも契約書・設計図・入居時の状態記録が主な判断基準となります。 したがって、入居契約時に「原状回復の範囲」「スケルトン返しの要否」「設備の扱い」などを明確にしておくことが、後のトラブル防止につながります。




4. 原状回復特約の有効性

商業テナント契約では、住宅用賃貸に比べて契約書に定める原状回復要項・特約が有効とされる範囲が広いのが特徴です。 つまり、契約書に明記された内容によって、借り手が負担すべき原状回復工事の範囲が大きく拡張される傾向にあります。


その理由は、商業テナント契約が事業者間の取引であり、「対等な立場で契約を結んでいる」という前提があるためです。 このため、原状回復に関する特約は、原則として契約内容に沿って有効と判断されます。



4-1. 有効とされやすい特約

以下のような特約は、裁判例や実務上も「有効」と認められるケースが多く見られます。


● スケルトン戻し(構造躯体のみの状態に戻す)

店舗やオフィスの契約では、「スケルトン戻し(スケルトン返し)」が明記されている場合、借主は内装・設備・仕上げをすべて撤去して構造躯体の状態に戻す義務を負います。 これは商業テナントではケースとして見られる契約条件であり、原則として有効です。


ただし、契約書に「スケルトン戻し」と記載があるだけでなく、どの範囲をその対象とするか(照明・空調・給排水設備など)を明確にしておくことが重要です。 曖昧なまま工事を進めると、後に「想定外の範囲まで負担を求められる」トラブルが発生します。



● 造作物の全面撤去

造作・看板・間仕切り・床材などをすべて撤去する特約も、事業用契約では有効とされます。 特に、入居時にテナント側で自由に内装を設計・施工している場合は、「自己設置部分は退去時に撤去」が原則です。 この特約は、ビル全体の統一感や次テナントへの引き渡し条件を確保する目的があるため、合理的と判断されやすいです。



● 専門的な清掃・補修

業務用空調機の洗浄、厨房グリストラップの清掃、床ワックス掛けなど、専門業者によるクリーニングを義務付ける特約も有効とされます。 住宅の「ハウスクリーニング」とは異なり、商業施設では衛生基準・安全基準を満たす必要があるため、一定の専門清掃費用が発生することは妥当とされています。



4-2.無効とされる可能性のある特約

一方で、特約であっても内容によっては無効または修正される可能性があります。 特に、借主に過剰な負担を強いるような条項には注意が必要です。


● 著しく常識を逸脱した範囲の修繕

通常の使用を超えて、建物全体の改修や共用部・他テナント区画への影響を含む修繕を求めるような特約は、合理性を欠くため無効とされる可能性があります。 例:共用廊下の改装、建物全体の外壁修繕など。

契約の目的(借主が使用した範囲に限定される)を超える内容であれば、借主の負担義務外と判断されます。



● 建物の構造的欠陥の修繕

建物自体の経年劣化や構造不良に起因する修繕(雨漏り、配管破損、断熱不良など)は、貸主の維持管理責任にあたります。 これを借主に転嫁するような特約は、仮に契約書に記載されていても、実質的に無効とされる場合があります。



● 明らかに貸主利益のためだけの工事

借主の使用状況とは無関係に、貸主が物件の資産価値向上を目的として工事を求めるような特約も、無効となる可能性があります。 たとえば、退去後にビル全体を改装する計画があるにもかかわらず、借主に全面的な原状回復を負担させるようなケースは、不当な条項と判断されることがあります。



■ まとめ

区分

有効とされやすい特約

無効とされる可能性がある特約

内容

スケルトン戻し、内装・設備撤去、専門清掃

建物構造欠陥の修繕、共用部改修、貸主利益のみの工事

判断基準

契約上の明確な定義・合理性

負担範囲の過大さ・不合理性

実務上の注意

特約内容を入居前に確認・明文化

曖昧な表現(「一式」など)は要確認


商業テナント契約では、「契約書にどう書かれているか」が重要な基準になります。 そのため、入居時に特約の内容を十分に理解し、どの範囲まで原状回復義務が及ぶのかを文書で明確化することが極めて重要です。 不明確な条項がある場合は、必ず契約前に専門家やコンサルタントへ確認を行い、後のトラブルを未然に防ぎましょう。

 



5. 原状回復の範囲を決める重要な要素

原状回復工事の範囲は、「どこまで復旧すれば契約上の義務を果たしたことになるか」を判断するための最も重要なポイントです。 そしてその範囲は、単に「退去時の状態」だけで決まるものではありません。

大きく分けて、 1️⃣ 賃貸借契約書の内容 2️⃣ 物件の構造・築年数 といった要素が大きく影響します。

それぞれの観点から、具体的にどのような点に注意すべきかを解説します。


5-1. 賃貸借契約書の内容

商業テナントにおいて、原状回復の範囲を決定づける最も重要な資料が賃貸借契約書です。 契約書には、退去時の義務・制限・例外が詳細に定められており、その記載内容が原状回復範囲を左右します。

以下の条項は、特に注意して確認すべきポイントです。


■ 原状回復特約

契約書内に「原状回復要項・特約」として、退去時の復旧義務が明記されている場合、その内容が最優先されます。 

たとえば、

  • 「借主は退去時、スケルトン状態にて返還するものとする」

  • 「造作・設備は借主負担にて撤去する」 といった記載がある場合、借主は原則としてその範囲に従う義務を負います。

ただし、条文があいまいな場合や、実際の使用状況に合わない特約が含まれている場合は、事前に貸主・管理会社と確認することが大切です。



■ 具体的な工事内容の明記

契約書や付随する「貸方基準」「原状回復仕様書」に、具体的な工事項目が明記されている場合があります。 例:

  • 壁・床・天井仕上げの撤去または張替え

  • 空調・照明・電気設備の撤去範囲

  • サイン・看板の処理方法


これらの記載がある場合は、その通りに施工する必要があります。契約時にはどのような範囲で原状回復義務が生じるか確認しておくことが推奨されます。 記載がなければ、実際の使用状況と入居時の状態記録から判断するのが一般的です。



■ スケルトン戻しの有無

店舗や飲食店などでは、「スケルトン戻し(構造躯体までの解体)」が契約条件に含まれているケースが多く見られます。 この場合、造作・床・天井・設備のすべてを撤去し、コンクリート躯体の状態に戻す必要があります。


一方で、オフィスや医療テナントなどでは「内装を残置して引き渡す」ケースもあり、契約書にその可否が定められていることがあります。 したがって、スケルトン戻しの要否は必ず確認し、見積段階で施工範囲を明確化することが重要です。



■ 除外事項の記載

契約書に「原状回復対象外」として明記されている項目(例:オーナー設置の共用設備、空調機など)は、借主負担の範囲から除外されます。 特に、入居時に既に存在していた什器・照明・配線などは、除外項目として扱われることが多いです。


こうした記載があるかどうかで、費用負担額が大きく変わるため、見積前に除外範囲を正確に把握しておくことが大切です。



■ 使用用途の制限

契約書内には「使用用途」や「許可された事業内容」が明記されています。 例えば、「飲食業は禁止」「軽作業のみ可」などの制限がある場合、それを超える使い方をしていた場合には追加の原状回復義務が発生する可能性があります。



■ 許可された事業内容・営業時間の制限

業態・営業時間が契約内容と異なる場合、床・壁・設備の劣化が通常より早まることがあります。 貸主から「想定外の損耗」と判断されると、原状回復範囲が広がることもあります。 特に、飲食・美容・医療系などの業態では、契約時点で使用条件を明確にし、必要に応じて合意書を作成しておくことが理想です。



■ 改装工事の制限

テナントが自主的に行う改装・設備工事に関して、「貸主の事前承諾が必要」と定められているケースがほとんどです。 無断で改装を行った場合、退去時に原状回復費用が増額される可能性があります。 改装を検討する際は、事前に図面を添えて承諾を取得し、書面で残すことが重要です。



5-2. 物件の構造・築年数

物件の構造や築年数も、原状回復範囲を判断する上で重要な要素です。 同じ損耗でも、築浅か築古かによって「どちらの責任か」の判断が異なることがあります。



■ 築年数による影響

  • 築浅物件(築10年未満)  比較的新しい物件では、オーナー側が「できるだけ入居時と同等の美観を維持したい」と考える傾向が強く、  原状回復範囲が厳格に設定されるケースが多いです。  壁紙・床材・建具などの張替えを求められることが一般的です。

  • 築古物件(築20年以上)  建物自体の経年劣化が進んでいるため、通常損耗の範囲が広く解釈される傾向があります。  クロスの色あせや床材の変色など、経年による劣化は貸主負担と判断されることもあります。  ただし、使用状況や改装履歴によって例外もあります。



■ 建物構造による違い

  • 木造物件  湿気・結露・歪みなどによる損傷が発生しやすく、カビやシミの発生も見られます。  これらは「構造上の特性」に起因するものであれば貸主負担となりますが、  適切な換気・清掃を怠った場合は借主責任とされる可能性があります。

  • 鉄筋コンクリート造(RC造)・鉄骨造(S造)  構造的な問題は少ないものの、電気・給排水・空調設備の経年劣化が発生しやすい構造です。  設備トラブルが建物全体の老朽化に起因する場合は貸主負担となりますが、  借主施工の設備変更や改造が原因の場合は借主負担になるため、設備管理記録の保管が重要です。




6.まとめ

原状回復は、テナント事業者にとって退去時の大きな負担となる可能性がある一方で、適切な知識と準備により大幅なコスト削減が可能です。


重要なポイント

  1. 原状回復義務の範囲を正確に理解する

  2. 契約書の内容を詳細に確認する

  3. 専門家のアドバイスを積極的に活用する


適切な原状回復対策により、不要な費用負担を避け、事業資金をより有効に活用することができます。



お困りの際は専門家にご相談を

原状回復に関するお悩みや疑問がございましたら、お気軽に当社までご相談ください。

 


[今すぐ無料相談に申し込む]


建設のプロに無料相談
ご相談内容
bottom of page