原状回復におけるスケルトンとは? 費用と工事範囲、契約時に注意すべきポイントを解説
- shuheikakita9
- 2025年12月17日
- 読了時間: 7分
更新日:1月16日
「スケルトン戻しって、どこまで撤去する必要がある?」 「見積もりが高額なのは、何が原因なのか分からない」 「契約書に“スケルトン返し”と書かれているが、具体的な範囲が曖昧…」
オフィスや店舗の退去を控えた担当者の方から、よくご相談いただく内容です。
スケルトンは、定義が建物・契約・業種によって大きく異なるため、誤解されたまま進めてしまうと、数百万円単位で費用が増えることさえあります。また、撤去してはいけない共用設備まで撤去対象とされ、後から是正工事が必要になるケースも珍しくありません。
そこで本記事では、原状回復コンサルタントのフォレル合同会社が、スケルトンの正しい理解と、トラブルを避けるための実務ポイントを体系的に解説します。
スケルトンとは
スケルトンとは、天井・壁・床などの内装材や造作をすべて撤去し、コンクリート躯体(くたい)だけの状態に戻すことを指します。
一般的には、以下の状態を指すことが多いです。
● 天井:軽天・ボード撤去、配線露出
● 壁:すべて解体
● 床:カーペットやフローリング撤去
● 造作:受付カウンター・間仕切りなど全撤去
ただし、これはあくまで「一般論」です。
実際には、建物管理会社のルール・賃貸借契約書・業種によってスケルトンの定義が異なります。
原状回復・居抜きとの違い
種類 | 状態 | 特徴 |
スケルトン戻し | 躯体状態まで撤去 | 最も費用が高い場合が多い |
原状回復(内装復旧) | 入居前の状態に戻す | 通常のオフィス退去 |
居抜き | 設備や内装を残す | 最も費用が安い 次の入居者がそのまま利用 |
特に店舗では「原状回復=スケルトン」と誤解されがちですが、これは契約内容によって大きく異なります。
業種で異なるスケルトンの定義
オフィス
比較的シンプルで、設備の撤去範囲が明確なことが多いです
医療クリニック
・ 給排水設備が多い
・ 医療ガス・床補強など特殊設備 → スケルトン戻しが高額化しやすい
飲食店舗
・ 厨房設備
・ グリストラップ
・ 給気・排気ダクト → 設備撤去だけで数百万円規模になるケースも
スケルトン戻しの工事範囲|どこまで撤去する必要があるのか?
スケルトンで最も重要なのは、撤去するものと撤去してはいけないものの線引きです。
スケルトンで一般的に撤去する項目
・間仕切り(軽量鉄骨・ボード)
・天井仕上材
・照明器具(テナント専有のもの)
・床材(カーペット・長尺シート)
・給排水設備(テナント側で増設した部分)
・造作家具・受付カウンター
・室内標識・サイン類
・空調の吹出口の移設部分
撤去してはいけない項目(共用設備)
スケルトンだからといって、すべてを撤去してよいわけではありません。
以下は建物共有設備(A工事)であり、撤去してはいけない代表例です。
・給排水立管
・空調機本体(ビルマルチ方式)
・電気幹線
・防災設備・感知器(ビル管理領域)
・排煙設備
・共用空調のダクト
・基準照明
もし誤って撤去してしまった場合、再設置費用をテナント側が負担させられるリスクがあります。
トラブル例:撤去範囲の誤認で数百万円増額
あるクリニックの退去で、 管理会社から「設備をすべて撤去してスケルトンに」と求められたケース。
しかし、実際に確認すると、
・空調機本体
・給水立管
・防災設備
など、建物側の設備まで撤去対象になっていたことが判明。
契約書と建物仕様を丁寧に整理することで、 不要な撤去工事を大幅に削減し、最終的には数百万円の減額につながりました。
スケルトンの費用相場|坪単価・工事項目ごとの目安を解説
スケルトン戻しは、通常の原状回復よりも費用が高くなりやすいです。
坪単価目安(2026年時点)
物件タイプ | 坪単価相場 | 特徴 |
オフィス | 20〜30万円 | 標準的なスケルトン |
飲食店 | 25〜35万円 | 厨房・排気設備で高額に |
クリニック | 20〜25万円 | 給排水・ガス設備の影響 |
※地域や建物グレードにより±20〜30%変動
工事項目ごとの費用イメージ
工事内容 | 目安費用 | 備考 |
間仕切り撤去 | 1,500〜2,000円/㎡ | LGS・ボード仕様 |
天井撤去 | 1,500〜2,000円/㎡ | 照明撤去含む場合あり |
床材撤去 | 1,000〜2,000円/㎡ | 店舗は高額化しがち |
電気設備撤去 | 数百円〜数千円/m | 配線種類、太さ等による |
給排水設備撤去 | 数百円〜数千円/m | 配管種類、太さ等による |
諸経費 | 工事金額の10〜15% | 夜間作業で増加 |
実例:設備撤去の有無で費用が2倍に
同じ30坪の飲食店舗でも、
・厨房ダクト撤去あり:500〜700万円
・厨房ダクト撤去なし:250〜350万円
と、設備によって費用が大きく上振れします。
契約書で必ず確認すべきスケルトン戻しの条項
スケルトンが必要かどうかは、契約書の条文で決まります。
必ず次の項目を確認してください。
① スケルトンが義務か、軽微な原状回復でよいのか
条文例:
・「退去時はスケルトン状態で返還する」
・「入居前の状態に戻す」
前者は完全スケルトン、後者は内装復旧だけの可能性があります。
② 工事区分(A/B/C工事)の整理
・ A工事(建物側設備)は撤去不要
・ B工事 テナント要望の追加工事範囲は原状回復対象
・ C工事(テナント工事)が原状回復対象
区分の誤認は、もっとも費用トラブルの多い部分です。
③ 指定業者の有無
「ビル指定業者施工」と書かれている場合、 相場より2〜3割、場合によって2倍以上高くなるリスクがあります。
④ 民法621条(原状回復義務)との整合性
民法では、通常損耗(経年劣化)は借主負担ではないとされています。 特約で拡張されているかを確認する必要があります。一方で事業用賃貸では特約が拡張されていることが一般的ですが、その範囲についても詳しく確認しておくことが大切です。
実例:曖昧文言を整理して工事範囲を半分に
条文に 「借主は入居時の状態に復するものとする」 とだけ記載されていたケース。
ヒアリングと現地調査を行い、
・給排水立管 → 建物側設備
・空調本体 → A工事
・内装 → C工事
・防水設備 →A工事
と整理した結果、 撤去範囲が20~30%縮小し、大幅なコスト削減につながりました。
スケルトン見積りで注意すべきポイント|高額化の原因はココ
スケルトン見積は、次の点で“高額になりやすい”構造があります。
① 一式表記で内容が不透明
例: 「解体工事一式 300万円」 何をどこまで含むのか分からないため、最も危険なパターンです。
② 数量・範囲の過大計上
・実際より広い面積で算出
・不要な全撤去
・工程が過剰
再精査するだけで、100万円以上削減できることも珍しくありません。
③ B工事(ビル指定業者)による高額化
指定業者は、
・競争原理が働かない
・調整費が上乗せされることがある ため、相場より高くなる傾向があります。
④ グレードアップ工事の混入
原状回復とは関係のない仕様変更が含まれているケースも。 (例:照明器具の新品交換、床材変更など)
実例:床全面撤去 → 部分撤去で対応し100万円削減
「カーペット全面撤去」が計上されていましたが、実際には使用状況が良好で、部分補修で十分な状態でした。
結果、工事範囲が大幅に縮小され、100万円以上のコスト削減に成功。
スケルトン工事でトラブルになりやすいケースと予防策
以下のトラブルは、スケルトン工事で非常に多く発生します。
よくあるトラブル
・設備撤去の境界が不明
・消防設備の扱いを誤る
・管理会社承認の遅れ
・夜間作業制限で工期が延びる
・退去日超過 → 追加賃料発生
予防策
✅契約書と工事区分を最初に整理
✅見積取得前に工事範囲を確定
✅管理会社へ早期に工事届提出
✅複数見積(相見積)で妥当性確認
✅一式見積を避け、数量・範囲を明確に
まとめ|スケルトンは定義・範囲・契約の理解で大きく差が出る
スケルトン戻しは、内装をすべて撤去するイメージがありますが、 撤去してよい範囲・撤去すべきでない範囲が明確に存在します。
そのため、
・契約書
・工事区分(A/B/C工事)
・建物仕様
・過去の工事履歴
を正しく整理しなければ、不要な工事まで負担させられる可能性があります。
「見積が高すぎる気がする」 「撤去範囲が適切か判断できない」 「契約書の読み取りが難しい」
このような場合は、早期にご相談いただければ、第三者の立場から公平に工事範囲と費用を精査し、無駄な費用負担を防ぐサポートを行います。
フォレル合同会社では 原則成果報酬制 のため、追加費用は発生しません。
お気軽にご相談ください。


