原状回復における居抜きとは? スケルトンとの違いと引き継ぎ時の注意点を解説
- shuheikakita9
- 2025年12月18日
- 読了時間: 6分
更新日:1月15日

「居抜きで退去できると言われたが、本当に追加費用は発生しないのか?」 「スケルトンとの違いが曖昧で、結局どこまで工事しなければならないのかわからない」 「新しい入居者に内装をそのまま引き継ぎたいが、トラブルは起きないのか?」
原状回復の相談を受ける中で、特に誤解が多いのが 「居抜き」 という言葉です。 内装や設備を残したまま退去できるため、スケルトンよりも費用を大きく抑えられる場合があります。しかし、契約内容や設備の扱いを誤ると、退去後に責任問題が発生したり、貸主とのトラブルにつながったりするケースも少なくありません。
この記事では、原状回復専門コンサルタントとして大型オフィス・店舗案件を多数支援してきたフォレル合同会社が、
・居抜きとは何か
・スケルトンとの違い
・居抜き退去のメリット・デメリット
・引き継ぎ時に起きやすいトラブル
・契約書で確認すべき実務ポイント
をわかりやすく整理して解説します。
居抜きとは?原状回復における基本の意味を解説
居抜きの定義
居抜きとは、内装・造作・一部設備をそのまま残した状態で引き渡すことを指します。
具体例:
間仕切り
受付カウンター
床材・天井材
照明・コンセント
給排水設備(テナントが新設したもの)
厨房設備(店舗の場合)
「スケルトン戻し」のように全撤去する必要がないため、大幅な費用削減につながるケースが多くあります。
業種ごとの居抜きの特徴
オフィス
・間仕切り・会議室・家具などが残る
・造作譲渡で次の入居者に引き継がれるケースが多い
厨房付帯施設
・厨房設備・給排気ダクト・グリストラップなど多数の設備が残る
・設備不具合が後のトラブルになりやすい
医療クリニック・研究施設
・給排水設備が細かく、新規入居者が同業種でなければ活かせない場合もある
「居抜き=原状回復が完全免除」ではない
居抜き退去にはしばしば誤解があります。
居抜きでも原状回復義務は一部残る場合が多いのです。
例:
・故障した設備は撤去が必要
・汚損・破損は補修対象
・契約書で「原状回復は借主負担」と定められている部分が残る
そのため居抜き退去は、契約書・譲渡契約・設備状況の整理 が重要になります。
居抜きとスケルトンの違いを比較
項目 | 居抜き | スケルトン |
内装 | 残す | すべて撤去 |
設備 | 使用可能部分は残置 | 大部分を撤去 |
費用 | 比較的低コスト | 比較的高額 |
工期 | 短い | 長い |
トラブルリスク | 設備故障で発生しやすい | 比較的少ない |
実例:居抜きで退去でき、数百万円削減
オフィス退去の事例では、スケルトン戻しの見積が900万円でしたが、 居抜きで次の入居者が決まったことで範囲が縮小され、最終的に約300万円で退去できたケースもあります。
居抜き退去のメリット・デメリット
メリット
① 原状回復費が大幅に削減できる
スケルトンでは数百万円かかる工事も、居抜きなら50〜90%削減可能。
② 工期が短い
撤去工事が少ないため、退去スケジュールを圧縮できる。
③ 造作譲渡で価値を残せる
次の入居者が造作を購入するケースもあり、譲渡金収入が得られることも。
デメリット
① 設備の故障責任が曖昧になりやすい
退去後に「エアコンが動かない」などの指摘が入り、責任問題になることも。
② 貸主の承諾が必須
居抜きは貸主承諾がなければ成立しません。
③ 未承認工事が発覚しやすい
テナントが入居中に行っていた工事が未承認の場合、撤去指示が出る可能性があります。
居抜き物件の引き継ぎ時に発生しやすいトラブル
居抜きで最も多いのが、設備起因のトラブルです。
① 設備の故障責任が“新旧テナント間”で揉める
例:
・入居前にエアコンが故障
・給排水の漏れが引き継ぎ後に発覚
・換気設備の性能低下をめぐるトラブル
・原因がどちらにあるか判別が難しく、責任範囲が曖昧になりがちです。
② ビル仕様・消防法令に適合していない
居抜きで残す内装や設備が、ビル基準や法令に適合しない場合があります。
例:
・感知器の位置がズレている(消防設備の法不適合)
・排煙設備が不足
・飲食店舗、厨房設備の排気ダクトが不適合
③ 貸主の承諾が得られていない工事が残っている
居抜きで引き渡す際に発覚する典型例です。
実例:空調不具合によるトラブル
引き継ぎ後、新入居者から 「空調が動かないので修理費を負担してほしい」 という連絡が来たケース。
調査したところ、原因は“経年劣化”。 賃貸借契約に基づき貸主負担と整理し、トラブルを回避。
居抜き退去の契約書で必ず確認すべきポイント
居抜きで最も重要なのが契約内容の整理です。
① 造作譲渡契約の有無
内装・設備を残す場合、譲渡契約 が必要です。
・譲渡金額
・設備の状態
・瑕疵(故障)の扱い
などを明確にします。
② 貸主の承諾があるか
居抜きは 貸主が認めること が前提です。 勝手に引き継いでも無効になります。
③ 撤去免除範囲を明文化する
「どこまで残せて、どこまで撤去するか」を明文化します。
④ 設備の瑕疵担保責任
故障した設備を誰が負担するのか、曖昧にすると必ずトラブルになります。
⑤ 原状回復義務の所在
居抜きで次のテナントに引き継いでも、 最終的な原状回復は貸主との契約に基づいて発生します。
残置物が原因で次の退去者が原状回復できない場合、責任問題につながることもあります。
居抜きで退去するための実務ステップ
① 居抜きで退去できるか貸主に事前確認
最初に行うべきステップです。
② 設備状況の調査
写真・図面、施工記録を確認して設備の状態を明確にします。
③ 次の入居者との調整
造作譲渡の条件を決めます。
④ 貸主・管理会社との三者調整
居抜きでの引渡し方法、免除範囲などを合意します。
⑤ 引渡しチェックリストで最終確認
・残置物
・故障設備
・清掃範囲
・契約書との整合性
を確認し、トラブルを防ぎます。
まとめ|居抜きは“契約・設備・責任範囲”の整理で大きなメリットに
居抜きは、費用と工期を大幅に削減できる非常に有効な方法です。 しかし、設備の状態や責任範囲が曖昧なまま引き渡すと、退去後にトラブルにつながるリスクがあります。
✅契約書
✅設備状況
✅造作譲渡契約
✅責任範囲
✅撤去免除範囲
これらを整理するだけで、トラブルの多くは防ぐことができます。
「居抜きで退去できるのか判断できない」 「引き継ぎでトラブルが起きないか不安」 「スケルトンとどちらがよいか相談したい」
そのような際は、第三者として公平・中立の立場で判断できるフォレル合同会社にぜひご相談ください。

