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建築プロジェクトの進め方|企画から引渡しまでの全フェーズ完全ガイド

  • 6月12日
  • 読了時間: 10分

「初めて建築プロジェクトの担当を任された」「総務部から急に新社屋の建設プロジェクトのリーダーに指名された」――そうした担当者が直面するのが、建築プロジェクトの全体像が見えないという不安です。設計事務所、ゼネコン、各種コンサルタント、社内の関係部署。多くの登場人物が複雑に関わるため、「いま自分は何を判断すべきか」「次に何が起きるのか」が見通せず、結果として意思決定が遅れ、プロジェクト全体が後手に回るケースは少なくありません。


建築プロジェクトを成功に導く第一歩は、企画から引渡しまでの全フェーズを「フェーズ思考」で構造的に理解することです。各フェーズで何が決まり、発注者が何を判断すべきかを把握すれば、迫いのない意思決定と適切な専門家の活用ができるようになります。


本記事では、建築プロジェクトを以下の6フェーズに分けて、それぞれの目的・実施事項・発注者が関与すべきポイントを網羅的に解説します。


1. 企画フェーズ

  1. 基本計画フェーズ

  2. 設計フェーズ(基本設計・実施設計)

  3. 施工フェーズ

  4. 竣工・引渡しフェーズ

  5. 運用フェーズ


建築プロジェクトの全フェーズ概観と時間軸


各フェーズの相対的な期間と、コスト・仕様の確定度を概念的に整理すると、次のようになります。


中規模ビルを例にすると、企画フェーズは1~3ヶ月、基本計画フェーズは2~4ヶ月、設計フェーズは6~12ヶ月、施工フェーズは12~24ヶ月、竣工・引渡しフェーズは1~2ヶ月、その後の運用フェーズは数十年に及びます。コストの確定度は企画段階で±30%、基本計画で±15~20%、設計で±5~10%とフェーズが進むほど高くなります。


注目すべきは、コスト確定度はフェーズが進むほど高くなる一方で、コストに与えられる影響力(コントロール余地)はフェーズの初期ほど大きいという点です。一般的に、企画段階での意思決定が建設コスト全体の約70~80%を左右するとされており、後工程ではコストの「確認」しかできなくなります。


つまり、建築プロジェクトの巧拙は、上流フェーズで何をどこまで決めておくかで大半が決まるのです。



フェーズ1:企画 「何のために建てるか」を言語化する


企画フェーズは、プロジェクトの「目的」と「制約条件」を明確にするフェーズです。具体的には事業目的(収益化・本社機能の集約・働き方改革など)、必要諸室・想定利用人数、建設地・敷地条件、概算予算と資金調達計画、スケジュール(着工・竟工目標)、関係するステークホルダーといった事項を整理します。


このフェーズで陥りやすい失敗は、「漠然としたイメージのままで設計依頼に進んでしまう」ことです。設計者は与えられた条件をもとに図面化を始めますが、企画段階で詰めきれていない要件は、設計途中で「やっぱり違った」「この機能を追加したい」と後出しになり、設計やり直し・追加コスト・工期遅延の三重苦を招きます。


企画フェーズで発注者が必ず行うべきは次の3点です。第1に、社内のステークホルダーから要望をヒアリングし、優先順位を決めること。第2に、コスト・工期・品質の3軸で「譲れない順位」を明文化すること。第3に、意思決定者と決裁プロセスを明確化すること。特に意思決定者の不在は、後フェーズで深刻な遅延の原因となります。



フェーズ2:基本計画 要件と現実をすり合わせる


基本計画は、企画で整理した要件を、敷地条件・法規制・概算コストと突き合わせて「実現可能な計画」に落とし込むフェーズです。敷地調査(地盤・インフラ・周辺環境)、法規調査(用途地域・容積率・建築基準法・条例)、配置計画・ボリュームスタディ、概算コストの精度向上、発注方式の決定、設計者・施工者の選定方針などを検討します。


基本計画フェーズで発注者が決断する必要があるのは、主に次の3点です。第1に発注方式の選択。一括請負方式・CM方式・設計施工一括方式・ECI方式など複数の発注方式があり、それぞれコスト・工期・リスク分担の特性が異なります。プロジェクトの規模・複雑性・社内リソースに応じて選択します。第2に設計者の選定。プロポーザル方式・コンペ方式・特命方式など、何を重視するかで選び方が変わります。第3に概算予算の確定。「目標予算」と「上限予算」の両方を明示し、超過時の対応方針(仕様の見直し・スコープ調整など)も合わせて握っておくことが重要です。



フェーズ3:設計 基本設計と実施設計の役割を理解する


設計フェーズは、基本設計と実施設計の2段階に分かれます。


基本設計では、建物の規模・配置・主要機能・構造方式・主要設備方式を決定します。図面としては平面図・立面図・断面図・主要設備計画図などが作成されます。コスト精度は±10~15%程度です。このフェーズで重要なのは、設計意図が発注者の要件と合致しているかを都度確認することです。「思っていたのと違う」を防ぐため、3DパースやBIMモデルを活用したビジュアル確認を取り入れる発注者が増えています。


実施設計では、施工に必要な詳細な図面(仕様書・特記仕様書・施工図のもとになる図面)を作成します。建材の品番・色・寸法まで決まり、見積精度は±5~10%まで上がります。


設計段階で発注者が陥りやすい罠は、「専門的すぎて分からないから、すべて設計者に任せてしまう」ことです。これは後の設計変更トラブルや追加コストの温床になります。重要なのは、設計図書の「読み方」を学び、要件との整合性を自分で確認すること、設計段階で予算超過の兆しがあれば早期にVE(バリューエンジニアリング)提案を依頼すること、設計変更の統制として要件変更が発生した場合は影響範囲(コスト・工期・他工事)を必ず文書化して合意することです。



フェーズ4:施工 現場で見るべき4つの視点


実施設計図書をもとに、施工者が建物を実際に建設するフェーズです。中規模ビルで12~24ヶ月、大規模プロジェクトでは3年を超えることもあります。施工フェーズの管理は、大きく次の4つの視点で行います。


第1に工程管理。工程表に沿って進捗を確認し、遅延の兆候を早期に把握します。クリティカルパス上の工事が遅れた場合、全体工期に直接影響するため、早期の対策判断が必要です。第2に品質管理。施工計画書通りに施工されているか、使用材料は仕様通りか、検査・試験は計画通り実施されているかを確認します。発注者側でも重要工程の立会い検査を行うことが望ましいとされています。第3に原価管理。追加工事・設計変更が発生した場合、見積りの妥当性を発注者側で評価できる体制を持っておくことが重要です。第4に安全管理。労働災害・第三者災害の防止は施工者の責務ですが、発注者にも安全配慮義務があり、定期的に状況確認を行います。


施工フェーズでは、通常週1回または隔週で「発注者定例会議」が開催されます。この場で進捗報告・課題共有・意思決定を行います。発注者が定例会議を形骸化させず、実質的な意思決定の場として活用できるかが、施工フェーズの成否を分けます。


フェーズ5:竣工・引渡し 「最後の確認」が将来のリスク

を左右する


竟工段階では、複数の検査が段階的に行われます。施工者の社内検査、設計者検査(工事監理)、施主検査(発注者検査)、行政検査(完了検査)、特定行政庁・消防署検査などです。


発注者として最も力を入れるべきが「施主検査」です。仕上げ材の品番・色・状態、建具の動作・施錠、設備機器の動作確認、防水・止水処理の確認、共用部・サービススペースの仕上がりなどをチェックします。是正項目はリスト化し、是正期限・再検査日まで合意しておきます。


引渡し時には膨大な書類が引き継がれます。完成図書、施工図(製作図・原寸図)、検査記録・試験成績書、各種保証書(防水・設備機器など)、取扱説明書・メンテナンスマニュアル、法定届出書類控を最低限揃えます。特に保証書の保証期間と免責条件は、後の瑕疵対応で根拠となるため、必ず内容を確認して保管します。



フェーズ6:運用 建築の真の評価は引渡し後に決まる


引渡し後の運用フェーズは、建築プロジェクトの成果が問われる本番です。一般に運用期間は数十年に及び、ライフサイクルコスト(LCC)の観点では、初期投資(建設コスト)よりも運用・保守コストの方が大きくなることが知られています。


運用フェーズで発注者が押さえておくべきは次の3点です。第1にアフターサービス期間の管理。契約上のアフターサービス期間(一般に2年)内に発生した不具合は、施工者の費用負担で対応されます。期間終了直前の総点検が有効です。第2に瑕疵担保責任期間。構造躕体・防水などの法定または契約上の瑕疵担保期間(一般に10年)を意識して、不具合発生時の対応窓口を整備しておきます。第3に保守・メンテナンス計画。建物の各部位の更新サイクルを把握し、長期修繕計画を立てておきます。


運用段階の使い勝手や不具合は、次の建設プロジェクトの貴重な学びとなります。運用段階の振り返りを社内に蓄積する仕組みを持つ事業者は、回を重ねるごとに建築発注の成功確率を高めています。

まとめ 全フェーズを「自分の言葉」で語れる発注者を目指す


建築プロジェクトは、企画から運用まで含めると数年~数十年に及ぶ長期事業です。各フェーズで何が決まり、発注者として何を判断すべきかを構造的に理解しておくことが、プロジェクト成功の最大の鍵となります。


ただし、本記事で示したような全フェーズの専門知識を、すべて発注者側で持つことは現実的ではありません。そこで活用したいのが、発注者の立場に立って全フェーズを支援する建築プロジェクトマネジメント(PM)やコンストラクションマネジメント(CM)といった専門サービスです。


PM/CM会社は、発注者の代わりに各フェーズの専門業務を遂行し、設計者・施工者との交渉や調整を発注者の利益最大化の視点で行います。「全フェーズを学ぶ余裕はないが、プロジェクトは成功させたい」という発注者にとって、強力な味方となります。


PM/CMの全体像は、当社ブログ「建築プロジェクトマネジメント(PM)とは」や「コンストラクションマネジメント(CM)完全ガイド」で詳しく解説しています。あわせてご一読ください。


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