CM方式の種類|ピュアCM・アットリスクCM・コストオン方式の違い
- 4月22日
- 読了時間: 10分
更新日:4月24日
はじめに:CM方式の「契約形態」を理解する重要性
CM方式(コンストラクションマネジメント方式)の導入を検討する際、多くの事業主が最初に直面するのが「どの契約形態を選ぶべきか」という問いです。
CM方式は一枚岩の仕組みではありません。契約形態やリスク分担の違いによって、主に「ピュアCM方式」「アットリスクCM方式」「コストオン方式」という3つのバリエーションが存在します。どれを選ぶかによって、発注者が負うリスク、コストの透明性、マネジメント関係者の役割、そして最終的な工事費の構造までが大きく変わります。

本記事では、CM方式の導入を検討中で契約形態を比較したい事業主に向けて、3つの方式の特徴、リスク分担の違い、選択基準を第三者視点で整理します。
1. 前提の整理:3つの方式の位置づけの違い
最初に、よくある誤解を解いておきます。
厳密に言えば、「ピュアCM」「アットリスクCM」はCMrが負うリスクの違いによる分類であり、「コストオン方式」は工事段階の発注契約の形態です。本来は異なる分類軸ですが、実務上はCM方式とコストオン方式を組み合わせて活用するケースが多いため、CM導入を検討する発注者にとっては比較して理解すべき3つの選択肢として整理されています。
以下、各方式を順に解説します。
2. ピュアCM方式の特徴
ピュアCM方式とは
ピュアCM方式は、CMrが発注者支援に徹し、施工リスクを一切負わない契約形態です。国土交通省が2002年に策定した「CM方式活用ガイドライン」でも中心的に想定されている方式で、単に「CM方式」と呼ぶ場合は通常このピュアCM方式を指します。
契約関係の構造
発注者とCMrは業務委託契約(準委任契約)を締結
発注者は設計者・施工者・工事監理者とそれぞれ直接契約を結ぶ
CMrは発注者の補助者・代行者として技術的中立性を保ちながら支援
ピュアCM方式のメリット
コスト構成の透明化:CMrが見積査定や市場価格比較を行い、発注者に内訳を可視化する
中立性の担保:CMrは施工の責任を負わないため、設計者・施工者の提案を純粋に発注者目線で評価できる
発注者の主導権維持:最終的な意思決定はすべて発注者が行い、裁量権が確保される
公共工事に適合:発注者の代行者という立場が、公共工事のアカウンタビリティ要求と整合しやすい
ピュアCM方式のデメリット
施工リスクは発注者が負担:工期遅延や品質不良のリスクは基本的に施工者と発注者で分担
CMr委託費が別途発生:工事費・設計費に加えてCM業務報酬が必要
発注者の意思決定負荷は残る:CMrは助言する立場であり、最終判断の責任は発注者にある
適している事業主・プロジェクト
ピュアCM方式は、コストの透明性とアカウンタビリティを重視する発注者に適しています。官公庁・自治体の公共工事、上場企業の本社建設、学校法人・医療法人の施設建設など、説明責任の高いプロジェクトで特に相性が良い方式です。日本国内でCM方式として実施される案件の大半は、このピュアCM方式に属します。
3. アットリスクCM方式の特徴
アットリスクCM方式とは
アットリスクCM方式は、CMrが施工に関する一定のリスクを負う契約形態です。ピュア型の業務をベースとしつつ、「最大保証金額(GMP:Guaranteed Maximum Price)」を設定することで、工事費の上限をCMrが保証します。
契約関係の構造
発注者とCMrは請負契約的な性格を持つ契約を締結
CMrが専門工事会社を束ねる立場となり、プロジェクト費用の上限を保証
コストを完全開示する「オープンブック方式」と組み合わせるのが一般的
アットリスクCM方式のメリット
工事費の上限保証:GMPの設定により、発注者は予算超過リスクを回避できる
オープンブックによる透明性:原価がすべて開示され、発注者はコスト構成を把握できる
リスク分担の明確化:GMPを超過した場合のリスクはCMrが負担するため、施工責任の所在が明確
発注者の負担軽減:ピュアCM方式に比べて、発注者が負うリスクは相対的に軽減される
アットリスクCM方式のデメリット
事例が少ない:日本ではピュアCMに比べて導入事例が限定的で、経験豊富な実施者が限られる
建設業法上の位置づけが課題:CMrが施工リスクを負うため、建設業法上の扱いが論点になる場合がある
中立性がやや弱まる:CMr自身が施工責任を負うため、発注者に対する純粋な第三者性はピュアCMより下がる
GMP設定の難易度:適切なGMPを設定するには、設計内容が相当程度固まっている必要がある
適している事業主・プロジェクト
アットリスクCM方式は、工事費の上限を早期に確定させたい発注者や、不確定要素が多く工事詳細が初期段階では読めない緊急性の高いプロジェクトに適しています。東日本大震災後の復興事業の一部(石巻市水産物地方卸売市場建設事業など)で採用された実績があり、迅速な事業推進が求められるケースで有効です。
4. コストオン方式の特徴
コストオン方式とは
コストオン方式は、発注者が特定の専門工事会社や資材メーカーを直接選定し、その工事費に現場管理費(コストオンフィー)を上乗せして元請会社(ゼネコン)と契約する工事発注方式です。契約上は専門工事会社やメーカーは元請会社の下請となりますが、選定・価格決定は発注者が主導します。
契約関係の構造
発注者が専門工事会社・資材メーカーと直接交渉し、価格を決定
発注者・元請会社・専門工事会社の三者でコストオン協定書を締結
元請会社は発注者と合意した金額にコストオンフィーを上乗せして請負契約
コストオンフィーは一般的に3〜10%程度で、統括管理費・仮設インフラ費・揚重機使用料などに充当される
コストオン方式のメリット
発注者の意向を反映しやすい:設備業者や仕上材メーカーを発注者が指名できる
工事費の透明化:一括発注で「一式いくら」とされがちな項目の内訳が明確になる
スケールメリット:複数プロジェクト間で共通の業者を指定することで、スケールメリットを活用できる
発注者リスクの軽減:分離発注方式とは異なり、契約上は元請会社が一元管理するため発注者の管理負担は相対的に軽い
瑕疵担保責任の明確化:指定業者の施工範囲については、原則として指定業者が発注者に対して瑕疵担保責任を負う
コストオン方式のデメリット
発注者の専門性が必要:専門工事会社との直接交渉には、分離発注方式と同等の知識・経験が求められる
コストオン協定書の作成負担:三者間の役割・責任区分を明記した協定書の作成が必要
元請会社との関係構築:元請会社が「指定された下請」を管理する形になるため、関係性の調整が必要
設備工事に偏りがち:日本では設備工事での採用が多く、建築本体工事への適用は限定的
適している事業主・プロジェクト
コストオン方式は、特定の設備仕様や資材メーカーにこだわりがある事業主、複数拠点展開で共通仕様を維持したい企業、ライフサイクルコストを重視する施設運営者に適しています。ホテル・病院・工場・チェーン店舗などで採用事例が多く見られます。
5. 3方式の比較表
項目 | ピュアCM方式 | アットリスクCM方式 | コストオン方式 |
主な位置づけ | 発注者支援の仕組み | 発注者支援+施工リスク負担 | 工事発注契約の方式 |
CMrの契約形態 | 業務委託(準委任) | 請負契約的 | (併用時は業務委託) |
施工リスクの負担 | 施工者+発注者 | CMrが一部負担(GMP) | 元請会社が負担 |
コスト透明性 | 高い(見積査定による) | 非常に高い(オープンブック) | 高い(内訳が明確) |
発注者の関与度 | 中〜高 | 中 | 高(業者選定に関与) |
日本での事例数 | 多い | 少ない | 中(設備工事中心) |
相性の良い案件 | 公共工事・説明責任案件 | 緊急・大規模案件 | 仕様こだわり案件 |
6. リスク分担の違い
3方式の最も本質的な違いは、「施工に関するリスクを誰が負うか」という点にあります。
ピュアCM方式のリスク分担
施工リスクは原則として施工者と発注者で分担します。CMrは助言者の立場であり、施工結果に対する責任は負いません。発注者は自らリスクを管理する代わりに、CMrの支援を通じて情報の非対称性を解消します。
アットリスクCM方式のリスク分担
GMP(最大保証金額)の範囲内で、CMrが施工リスクを負担します。工事費がGMPを超過した場合、その超過分はCMrの負担となります。発注者は予算の上限を早期に確定できる反面、GMP設定時点で相応の設計精度と情報開示が求められます。
コストオン方式のリスク分担
契約上は元請会社が工事全体の管理責任を負います。ただし、発注者が指定した専門工事会社の施工範囲については、指定業者が直接発注者に対して瑕疵担保責任を負うケースがあります。この「指定業者の責任範囲」をコストオン協定書で明確化することが、リスク分担を機能させる鍵となります。
7. 選択基準:どの方式を選ぶべきか
3方式の選択にあたっては、次の判断軸で検討するのが実務的です。
判断軸①:説明責任の重要度
公共工事や上場企業の案件など、投資判断の説明責任が強く求められるプロジェクトでは、中立性が最も高いピュアCM方式が第一選択肢になります。
判断軸②:予算の確実性
予算超過を絶対に避けたい、工事費の上限を早期に確定させたいプロジェクトでは、アットリスクCM方式が有力です。ただし国内の実施事例は限られるため、実績のあるCMrの確保が課題となります。
判断軸③:仕様・メーカーへのこだわり
特定の設備メーカー指定、チェーン展開での共通仕様、ライフサイクルコストを意識した部材選定など、仕様面での発注者主導性を重視する場合は、コストオン方式が適しています。
判断軸④:発注者側の専門性
発注者自身に建築専門知識が乏しい場合、専門工事会社との直接交渉が必要なコストオン方式はハードルが高くなります。その場合、ピュアCMの支援を受けながらコストオン方式を部分的に併用する「CMコストオン方式」も選択肢になります。
判断軸⑤:併用の可能性
これら3方式は排他的ではなく、併用が可能です。実際、民間建築でも公共建築でも、ピュアCM方式を基盤としつつ、特定工事区分にコストオン方式を部分適用する事例は珍しくありません。自社プロジェクトの特性に応じて、最適な組み合わせをCMrと相談して設計するのが現実的なアプローチです。
まとめ:契約形態選びがプロジェクト成否を左右する
本記事のポイントを整理します。
ピュアCM:発注者支援に徹し、施工リスクは負わない。中立性・透明性重視の案件に最適
アットリスクCM:GMP設定により施工リスクの一部をCMrが負担。予算上限の確実性が高いが事例は少ない
コストオン方式:発注者が専門工事会社を指定し、元請にコストオンフィーを上乗せ。仕様へのこだわりがあるプロジェクトに適合
3方式は排他的ではなく、併用が可能
選択は、説明責任/予算確実性/仕様主導性/発注者専門性の4軸で検討するのが実務的
契約形態の選択は、プロジェクトのリスク構造そのものを決める重要な意思決定です。自社プロジェクトの特性を整理し、信頼できるCMrと相談しながら、最適な契約形態を設計することが成功への近道といえるでしょう。
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フォレル合同会社は、発注者の立場に立った建築プロジェクトのコンストラクションマネジメント(CM)/プロジェクトマネジメント(PM)を提供する専門会社です。ピュアCM、アットリスクCM、コストオン方式など、多様な契約形態の中からお客様のプロジェクト特性に最適な方式をご提案します。
フォレル合同会社の強み
契約形態のカスタマイズ:プロジェクトの特性、発注者の体制、リスク許容度に応じて、最適な契約形態を設計します
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